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ファイティングスピリッツ

芸能界歴十年以上の元音楽プロデューサーが日々の真実を独特の視点で斜めに斬るブログ。


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世界食糧危機の嘘と真実


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1990年代後半米環境活動家のレスター・ブラウン氏が中国の食糧不足の可能性を指摘する『誰が中国を養うのか』という著作を発表して以来、世界では中国発の世界食糧危機説が一般人にも定着した。加えて穀物は今世紀に入って石油・銅などと同様乱高下を繰り返している。では本当に食糧危機は起きるのか?


①順調に伸びる中国の食糧生産
失速する中国経済の中で今唯一好調な部門がある。農業分野である。
中国の穀物生産は今年も好調で、米・小麦・トウモロコシにイモ類を含めた食料全体では昨年の5億7千121万トンを1千万トン以上上回る、5億8千500万トン達する可能性が高いと中国政府系のシンクタンクは予測する。そうなれば中国の食糧生産は9年連続で過去最高を更新することになる。日本のメディアでは中国の干ばつ被害や大豆輸入の増大、トウモロコシの本格輸入開始などが大きく取り上げられ、あたかも中国が食料不足に陥りかけているような印象が広がっているが、実態は全く逆らしい。中国は大豆輸入こそ今や年間5千万トン以上に達しているが米・小麦・トウモロコシの三大基礎穀物の自給自足をほぼ達成した。食料全体でも95%に近い自給率を維持している。現在中国を養っているのは中国自身なのである。

②世界の食糧増産は人口の伸びを上回る
米農務省(USDA)の統計によると世界の食料生産は過去半世紀で約3.9倍に増大した「1960~61年度に5億8384トンだったものが、2011~12年度には22億6944万トンにまで達している。その間に世界人口は約30億4000万人から69億人に増大しているがそれは2.3倍の伸びに過ぎない食糧の増産は人口の伸びをはるかに上回り、人類1人あたりが食べることの出来る食料は確実に増加しているのだ。
世界では飢餓のリスク以上に過剰な栄養摂取による肥満の問題のほうが実はより深刻な問題となっている。先進国はもとより中国やインドなどでは肥満や糖尿病が隠れた社会問題になっており、インドには世界で最も多くの糖尿病患者とその予備軍がいるといわれている。

では、この食糧増産の最中で起こった、食料価格の高騰は需給と無関係に起こっていることになる。世界の食糧市場は今どうなっているのだろうか?


③先進国・後進国の生産力格差が食糧危機を作り出す
では食糧問題はないのか?
現在の食糧問題の一つは先進国の過剰生産と途上国農業の弱体化である。米国とEUは穀物食用油脂(大豆・菜種など)の過剰生産を解決するために補助金付きで途上国への輸出政策を70年代から90年代初頭にかけて競ってきた。米・EUの小麦戦争もその一つである。
先進国の農業は米・カナダ・豪州などに象徴されるように広大な農地でGPSを用いて種をまき、農薬散布を無人飛行機で行なうといった科学的、工業的な農業である。その結果、現在では農産物の生産コストは先進国のほうが途上国より遥かに安くなっている。他方、途上国は耕作面積が小さく、灌漑設備のない天水農業で、害虫を退治する農薬も持たない。当然ながら生産効率は低く、毎年の収穫量のブレも大きい。
その結果、多くの途上国では生産コストが安く補助金付きの穀物などが大量輸入され、自国の農業基盤が崩された。そして途上国農民は自家消費分だけを耕作し、都市住民は輸入農作物を買うようになった。途上国は先進国に食糧生産を依存するようになったのだ。
しかし穀物は市況商品である。国際市況が上昇すれば途上国は食料を輸入できなくなる。2008年には中米ハイチで食糧暴動によって政府が転覆された。またチュニジアに端を発し、エジプト、リビア、シリアさらに湾岸諸国にまで広がった「アラブの春」の背景にも、食糧価格の暴騰がある。中でも人口9000万を抱えるエジプトは年間1000万トン前後を輸入する世界最大の小麦輸入国であった。この食糧輸入への依存構造は、アフリカ・中東・カリブ海諸国に共通する構造だ。
では誰がこの構造を作り上げたのか

④問題の本質は農産物メジャーの独占とマネーゲーム
アメリカに本拠を置く穀物メジャーカーギルは昨年度売上げ約10兆円。同じくアメリカに本拠を置く、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)と共に世界の穀物流通を牛耳っている。
かつて穀物メジャーは5社といわれていたが、現在は整理集約されて2強体制が築かれ、そこに新興勢力として丸紅・三井物産・全農などの商社が加わるという形で、世界の農産物取り引きは大手の寡占体制が進んでいる。21世紀の農産物メジャーの特徴は、種子から集荷、加工、輸出などを一貫して握っていることだ。世界で大規模な農園を経営している農民はメジャーの力が無ければ自らの収穫物をさばくことが出来ない仕組みとなっている。
他方、種子会社も絶大な影響力を持ち、米モンサント社、デュポン、スイスのシンジェンタ社3社で世界穀物種子市場の過半のシェアを占める。その多くは結実しても種を作らない「F1種」で、作付けを始めた農民は種子会社から種を買い続けるしかない。

この寡占体制に加えて農業の市場化が食糧を危うくしている。
シカゴ商品取引所穀物相場は金や原油並みに世界のファンドや投資家の関心を集め、大量のマネーが流入する。かつては期末在庫が穀物相場の決定要因であり、不作で在庫が減れば相場が上昇した。しかし21世紀に入ってからの相場変動は原油先物と同様投機資金によって完全に左右されている。投機マネーの流入による相場上昇はアフリカや中東の食糧価格を急騰させ、需給とは無関係に食糧危機を引き起こす。食糧が生産量としては増産を続けているにも拘らず、食糧危機が引き起こされるからくりはここにある。

今や、農産物メジャーや、種子、肥料、農薬に関わる巨大企業の情報操作が世界の食糧を危うくしているのである。

 

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